どぅも。最近、入院したり、難聴になったり、鼻炎だったり、歯抜いたりと、地味に満身創痍なゆぅです。こんにちは。
■一昨日ですかね、ついにやってきたんですよ。「G」が・・・。
あの黒く光るボディ。長い触角。べとべとに脂ぎった身体。カサカサと高速移動する足。
そうです。ゴキです。■
■思えば、この戦いはこの家に引っ越してきた翌年から続く死闘だ。
3年と8ヶ月前の夏・・・。ヤツは初めて俺の前に姿を現した。
俺一人、リビングでソファーに座ってテレビを見ている時のことだった・・・。
32インチのブラウン管から流れていたのは、生放送の歌番組(某ロシア人歌手がドタキャンしたのはもう少し先の話だ)。歌っていたのは、大阪弁の若い男の二人組。「剛は歌うまいなぁ・・・。」と、ほのぼの聞いていたのだが。ふと、何かの気配に気付いた。さっきも言ったが、この部屋には俺一人。何かが居るはずがない。しかし・・・。気にすれば気にするほどその気配は大きく感じられる。寒気がした。
「見なかったことにしよう。忘れることにしよう。」そう思い、今度は彼らの歌声に集中した。その間、少しはあの恐怖感から逃れることができた。しかし、それもつかの間。歌が終わり、黒いサングラスを掛けた司会のおじさんが話し出すと、また恐怖感が蘇ってきた。今度は、気配だけでなく、視線も感じる。冷や汗でTシャツが湿っているのを感じた。このまま、親が帰ってくるのを待つか、それとも・・・。
俺は決意した。汗でびしょぬれになった拳を握り直し、もうすでにガクガクになっていた足でソファーから降り、無理やり身体を後ろに反転させた。閉じていた目を見開いて、テレビとは逆の方向を向いた。しかし、そこには何の姿もなかった。さっきまで嫌というほど感じていた恐怖感も徐々になくなっていった。
「な、なんだ・・・。気のせいか・・・。」そうつぶやいて俺はテレビを見直した。司会の人が、「では準備ができたようですね。」と番組を進行させていた。
また歌が始まった。今度は若い女の人だった。目が大きく、わりと整った顔立ちだ。豪華なセットに負けないほどの歌声だった。少しの間、俺はその歌声に魅了されていた。
Aメロが終わり、サビに差し掛かったところだった。不意に、右側に黒い物体が見えた。「はっ」と、とっさにソファーから飛び上がり、さっき何かが居た所をもう一度よく見た。いや、よく見る必要なんかない。ぱっと見ただけで、それだとわかる。体長6センチにもなろうかという大物。まさにG・サップ。カブトムシのメスにも見えないこともない。しかし、カブトムシにはあんな長い触角はないし、あんな素早い動きもしない。
おもわず叫んでしまった
「おかぁさぁーーんーーー!!!」しかし、親はあいにく外出中。
こんな大物逃したら大変なことになる。しかし、Gを殺したことなんて1度もない。どうしよう・・・。殺るしかないのか・・・。テーブルにあった新聞紙を手に取った。目はG・サップの方を向いたまま、日にちを確認するのも忘れ、俺はその分厚い紙を丸めた。
G・サップと睨み合った。ヤツは壁にくっついていた。「まて、よく考えろ、このまま叩いてしまったら壁に汚れが付くではないか。G・サップがフローリングの床に降りてきたところを狙おう。」そう思い、Gが降りてくるのをひたすら待った。
G・サップはそれを感づいたのか、なかなかそこを動こうとしない。「新聞紙で突っついて下に落とす」という作戦がうかんだが、それはリスクが高い。もしもあの巨体が飛んででもしたら大変なことになる。それより、このまま微動だにしなかったら親が帰ってきて、あわよくば親に退治してもらおうという完璧な計画が台無しになってしまう。
結局、G・サップがそのまま動かないことを祈りつつ、下に降りてくるのを待つことにした。それから、十数分間睨み合ったままつっ立っていた。
そのとき、玄関の方で「がちゃっ」という音がした。びっくりして飛び上がりそうになったが、親が帰ってきた音だと気付いたら、もう空から天使が舞い降りてきたかのような安堵感で胸がいっぱいになった。
しかし、その音と同時にG・サップも動き出した。カサカサカサという効果音がぴったりな走り方で、ヤツがこっちに急接近してきた。あまりの恐怖に耐え切れず、親に助けを呼んだ。
おがぁざぁぁ~ん!!何事かと思った親がリビングに入ってきて、Gを見つけるやいなや、俺が決死の思いで丸めた新聞紙を俺の手から奪い取り、G・サップめがけて振り落とした。
早業だった。ポケモンの技で言うと、5回しか使えないだろうなと思った。尊敬に値する。おそらく俺があの技を習得するには今後20年はかかるだろう・・・。
退治し終わってやっと安心した。身体はまるで風呂上りのようにびしょびしょだった。寒くなってきた。「風呂に入ろうかな・・・。」もうガタガタになった体を動かし、風呂に入る準備をした。
ふと、テレビを見ると、あの耳に残るエンディングが流れていて、たくさんのミュージシャンがこっちに向かって手を振っていた・・・。■
■それからというもの、ちょくちょくとうちに現れるようになったG。結局自分の手は1回たりとも汚さずに、Gと死闘を繰り広げてきたわけだが、去年は死骸を抜いたら一匹も現れず、きっとこのまま平和が訪れるのだろう・・・。と、安心していたのだ。
しかし、現実はそんなに甘くなかった。一昨日、時期的には少し早いようなだが、第一陣が現れたのだ。「おそらく、今年は安心してサマーライフを過ごすことは出来ないだろう」と、思うと悲しくなってくる。
いつか、自分の手を汚さなくてはならない時がくるであろう・・・。そんな時は心してかからなくてはならないな。と、決意した今日この頃です。■
ほら、あなたの後ろにも♪
※
飯時に見た方、どうもすいませんでした。