満足度:
★★★☆☆ 3/5
【まだ描いてたんだ、絵――。
現代アートの芸術家を目指す27歳・上杉に届いた一通のメール。それは美大在学時に“巨大雪上地上絵”を制作した仲間からの同窓会開催の知らせであった。
一向に売れない絵、将来の見えない貧窮生活・・・・・・ 追い詰められた男の人生が、今、静かに動き出す――!!(表紙裏面より。)】
2巻までしか出版されてないということで、まだ話の展開がハッキリしないし、作中で結局何が云いたいかってところまで至っていないんですよね。ですから、この作品を評価するのはまだまだ早いので、まずは2巻までの感想を――。
1巻を読み終わって思ったのが、浅野いにおさんの作風に似てるな~・・・、と。悪い言い方をすれば、“パクりって程ではないけど、流行に乗っかった感じ”。でも、これはこれで面白い。“それ”がそこまで悪い方向に進んでないと思う。それと、テンポや展開が荒削りなんだけど、それがまた良い。もちろん綿密なストーリーと軽快なテンポで展開していった方が好きなのだけど、そうじゃないのもまた一興といった感じです。
2巻を読み終えて――。
1巻とは少し雰囲気が変わったかな。この巻で「恋愛の素材」が無くなって、アート(生活)一本になったのが原因か。
この巻では、主人公の“オリジナリティ”へのこだわりや希望が度々表現されています。このことから、恐らく「オリジナリティ」というのはこの作品の重要なキーワードだと思うのですが、
この漫画自体にオリジナリティが無いのでイマイチ納得できない。
もう一つ苦言を言うなら、「27歳のリアル」というのがこの作品のキャッチコピーになっているのですが、あまりリアリティがないです。むしろ現実離れしている方かと。
2つも気に入らないところを云ってしまったけど、どの作品にも気に入らないところってのは有ります。なので個人的にはそこまで気にならなかったし、続きが気になる作品なのでこれからも新刊が出る度にお金に余裕があれば買ってみようかなと思います。結構面白かったですよ。
それと、1巻に数ページほど収録されている著者の初期作品『チチリの世界』がすごく不思議な感じで惹かれました。本当に数ページだったけど、それだけで満足度+0.5(
★)でした。
満足度:
★★★☆☆ 3/5
『しあわせ』など、ヒューマンな作風のショート・ショートで注目を集めた若手だが、今回は初めてSF作品だけを集めた短編集になっている。
この作品、戸田誠二さんの最新作ということで非常に楽しみにしていたのですが。最初に読んだ時は、ガッカリでした。期待していた分・・・、という感じに。
ですが、今回ひさしぶりに読み返してみるとこれはこれで面白い。当初からネタ切れ感や展開の雑さが顕著に表面に出ていたのが気になっていて、駄作のレッテルを貼っていたのです。が、改めて読むと「アイディア、設定」が非常に面白い事に、今さらながら気付くことに。
【アイディアが面白い】
例えば、一話目に収録されている『キオリ』。
若手脳科学者・高橋が、自殺した女性の脳をひそかに培養するプロジェクトに参加する。
脳には音声装置がつながれ、コミュニケーションがとれるようになる。「体なんかなくたって大丈夫ですよ」「今の時代、脳さえあれば十分ですよ」と脳に語りかける高橋だったが、脳はやがて原因不明の萎縮を始める・・・という作品。
『キオリ』は、「生きることの尊さ」という戸田誠二さんがいつも読者に問いかけているテーマがすごく切実に、顕著に現れている作品。この話はなかなか良かった。
他には、最後の5話目に収録されている『クバード・シンドローム』。
男性の出産を認めた「クバード法」が成立した近未来を舞台に、妻にかわって子どもを出産する男を主人公にした短編。「クバード」とは、男が妊娠・出産を模倣する未開社会の風習の名だという。
これもなかなか面白い設定。ですが展開が少しベタな感じがするんですよね。それでも最後はそれなりに感動しましたし、この作品も好きな方です。
そういえば、シュワちゃん(もちろん男役)が子供を産む映画ってありましたよね。あれはコメディだったけど。アイディアの出元はそれなのかな。
表題作の『説得ゲーム』では。
プレイヤーがバーチャル空間に現れる自殺志願者を説得するゲームソフトの話。
自殺を思いとどまらせればクリア。説得できずに自殺されてしまったらゲームオーバー。ソフト開発者の正体は不明だが、ゲームをすべてクリアできた者には賞金1000万円が用意されている。
だが、開発者の正体は……。
ストーリーだけ聞いたらとても面白そうに思えるが、なんだか空回っていてそこまで面白くない。アイディア負けしてる。
他にも、他人の体に自分の脳を移植するという大手術により一命を取り留めた山本だが、新しい身体で生活していくうちに、”本当の自分”ではないという違和感を持ち始める・・・。という『NOBODY』。
『タイムマシン』タイムマシンを開発した研究者が最初に向かった行き先はとは・・・。などがある。
『NOBODY』は東野圭吾の小説に似たような設定の作品があるので、それに影響を受けたのだろうか。
本作はそれなりに楽しめるし、感動もする。ただ、『生きるススメ』、『しあわせ』と比べると、やや完成度の低い短編が集まってしまったように思う。
満足度:
★★★★★ 5/5
「週刊少年ジャンプ」誌上において1995年42号から1997年3・4合併まで、ジャンプとしては異例の月1連載で全16話を掲載。『幽☆遊☆白書』に続く、作者3作目となる連載作品。単行本はジャンプコミックスより全3巻。『アシスタントを使わず一人で描いたらどうなるか』ということに挑戦した作品であるため、月1での連載となった。
作者の出身地である山形県を基本舞台に、作者自身の趣味であるオカルト的な要素の強い、宇宙人を題材としたSF作品。地球にやって来たドグラ星のバカ王子が暇つぶしに起こす悪ふざけを軸とした物語がオムニバス形式で展開される。
全3巻と短い作品ながらも、設定・アイデア共によく練り込み詰め込んである為読み応えがあり、またシリアスとギャグのバランスがよく、常に読者の裏をかく展開の面白さから、連載当時より人気が高かったが、現在においてもカルト的な人気を誇り、作者の最高傑作に挙げる人も多い。
バカ王子に対して発せられた「あいつの場合に限って 常に最悪のケースを想定しろ 奴は必ずその少し斜め上を行く!! 」の台詞は有名で、ネット上を始めとして様々な分野で用いられる表現となった。
(以上ウィキペディアより。)
これほど完成された少年漫画には出合ったことがない。間違いなく富樫さんの最高傑作だと思っています。
意表をつくストーリー展開、シュールなギャグ、サスペンス、ミステリー、SF、シリアス、コミカル。様々な要素が異様なバランスを保って崩れない。かなりクォリティの高い作品です。
奇想天外な物語だが、内容がしっかりと練られているので、全体の骨格がしっかりとしている。なので、独自の理論を展開していたり、説明文がやたらと長いシーンでも非常にスムーズに読むことが出来る。 また、小説などでは表現しにくい様な事柄が、リアルな絵で表現されている。
参考にと、『HUNTER×HUNTER』と『幽☆遊☆白書』を全巻読んでみたが、比べると圧倒的に『レベルE』が面白かった。『レベルE』は彼の代表作である上記の二つの作品とは少々異質なものなのです。『ドラゴンボール』や『聖闘士星矢』風の作風であった『幽☆遊☆白書』から一変、オカルトチックなサイコサスペンス&ギャグに。
『幽☆遊☆白書』では主人公の成長過程の描写が殆ど無く、行き当たりばったりで全く説得力のない作品(いわいる”少年漫画”)に感じたが、本作では綿密に練られたストーリーと納得のいく設定により、非常に説得力のある作品に感じられる。
また、『HUNTER×HUNTER』では独自の世界感を取り入れ、主人公やその周りのキャラクターの成長過程や過去設定が非常に細かく表現され、「ストーリーの綿密さ」「説得力」ともに非常に完成度が高い。それでいて少年漫画としてのエンターテインメント性を融合させた、異例の作品と言える。少年漫画としてはずば抜けてクォリティの高い作品でした。それこそ『ヒカルの碁』に匹敵するほどに。
・・・しかし、最近の展開には少し腑に落ちない部分があります。 まずはバトルについて。長い期間をかけ形成された「念」という概念がおろそかになってきた気がします。22巻の旅団メンバーの能力や23巻のオロソ兄妹の力など、もはや四大行の流れや論理的な組み立てが感じられません(フェイタンの能力など王や親衛隊に楽々勝てるのでは?と思ってしまいます)。
もう一つは、キャラの魅力が少なくなってきたこと。ネフェルピトーなど、いきなり出てきて、とにかく凄いオーラだなどと言われても、いまいち強さもピンとこないし惹かれません。全体的に少し詰めが甘く、収集のつかない感じになってきているように思います。
さらに、背景を省いたり、書いてもネーム程度。もはや作画崩壊と言っても過言ではない状態。
少し長くなってしまいましたが、要は「終わり時を見失った」、「もしくは話も大きくしすぎて収集がつかなくなった」ということです。
しかし、『レベルE』は全3巻とコンパクト。それでいて内容が濃く、収集がつかなくなるということは無かった。作画もわりと手が込んでいます。
どの角度から見ても落ち目がない作品というのは本当に滅多にない。オカルトやサイコ系が嫌いな人にはちょっと苦手かもしれないが、そういう人以外には自信を持ってオススメする。
満足度:
★★★★★★(
★)☆☆☆ 6.5/10
【アイドルグループ、チャムに所属する霧越未麻は突如グループ脱退を宣言し、女優への転身を計る。
かつてのアイドルからの脱却を目指すと自分を納得させ(つつも事務所の方針に流されるままに)ドラマ出演でレイプシーンを演じる。さらにはヘアヌードのオファーが来るとアイドル時代からは考えられなかったような仕事をこなしてゆく未麻。
しかし、人気とは裏腹に未麻は現状への不満を募らせ、アイドル時代の自分の幻影さえ見るようになる。レイプシーンやヘアヌードは本当の自分の姿なのか。自分が望んだことなのか。
そんな疑問を抱く中、何とかインターネットに接続して見たホームページに自分の行動が本人の記憶以上に詳しく描写されていることに気づく。未麻はストーカーに監視されていたのだった。それと同時に、未麻の周辺で関係者が次々と殺される事件が発生する。
アニメーションサイコホラー。】
このパーフェクトブルーという映画の特徴は、とことんリアルなのに実写では映像化不可能であろう点です。この一見矛盾した事柄を理解していただくには本編を見てもらうしかないのですが。人間のエグさや影が垣間見えるように上手く表現できていると思います。
今敏監督お得意の現実と幻想が巧みに入れ替わる演出にはアッパレ。気を抜いたらこっちまでもがおかしくなりそうな、そんな狂気じみた雰囲気をかもし出しています。
ただ、事件について説明不足な感じや、 終わり方があっさりしすぎな所など、脚本で少々気に入らない部分もあったのも事実です。
それと、実はこの作品、劇場公開時はR指定でした。なのに、なぜか発売後のDVDはR指定マークがありません。パッケージにもそれを示唆する文書は少なくいため、そういう表現が含まれているとは分りにくい。観る側としては、R指定と知っていた方がそれなりの心の準備ができるのに。残念。
満足度:
★★★★☆☆☆☆☆☆ 4/10
原作の『ポセイドン・アドベンチャー』は人間ドラマを描いた良作と聞いていたので、わりと期待していたのですが、こっちのリメイク版は普通のアクションものになっちゃってました。普通の。
流石にCGはかなり綺麗だったんだけど、それだけでした。他にこれと言って良いシーンもなくかったかな。気に入らないところを挙げるとキリがないので、あえてちょっと気に入った所を挙げると、「その辺に死体がゴロゴロ転がってる」というところ。大きく見てリアリティが乏しい作品なのに、こういう細かいところでリアリティがあるのは面白い。
単純明快なアクション物として観る分にはそこまで悪くないと思うが、それなら船を逆さにする必要もないと思う。「ポセイドン・アドベンチャーのリメイク」というのを売り文句に使いたかっただけのアクション映画と言われても言い返せないでろう作品。