
満足度:
★★★☆☆ 3/5
『しあわせ』など、ヒューマンな作風のショート・ショートで注目を集めた若手だが、今回は初めてSF作品だけを集めた短編集になっている。
この作品、戸田誠二さんの最新作ということで非常に楽しみにしていたのですが。最初に読んだ時は、ガッカリでした。期待していた分・・・、という感じに。
ですが、今回ひさしぶりに読み返してみるとこれはこれで面白い。当初からネタ切れ感や展開の雑さが顕著に表面に出ていたのが気になっていて、駄作のレッテルを貼っていたのです。が、改めて読むと「アイディア、設定」が非常に面白い事に、今さらながら気付くことに。
【アイディアが面白い】
例えば、一話目に収録されている『キオリ』。
若手脳科学者・高橋が、自殺した女性の脳をひそかに培養するプロジェクトに参加する。
脳には音声装置がつながれ、コミュニケーションがとれるようになる。「体なんかなくたって大丈夫ですよ」「今の時代、脳さえあれば十分ですよ」と脳に語りかける高橋だったが、脳はやがて原因不明の萎縮を始める・・・という作品。
『キオリ』は、「生きることの尊さ」という戸田誠二さんがいつも読者に問いかけているテーマがすごく切実に、顕著に現れている作品。この話はなかなか良かった。
他には、最後の5話目に収録されている『クバード・シンドローム』。
男性の出産を認めた「クバード法」が成立した近未来を舞台に、妻にかわって子どもを出産する男を主人公にした短編。「クバード」とは、男が妊娠・出産を模倣する未開社会の風習の名だという。
これもなかなか面白い設定。ですが展開が少しベタな感じがするんですよね。それでも最後はそれなりに感動しましたし、この作品も好きな方です。
そういえば、シュワちゃん(もちろん男役)が子供を産む映画ってありましたよね。あれはコメディだったけど。アイディアの出元はそれなのかな。
表題作の『説得ゲーム』では。
プレイヤーがバーチャル空間に現れる自殺志願者を説得するゲームソフトの話。
自殺を思いとどまらせればクリア。説得できずに自殺されてしまったらゲームオーバー。ソフト開発者の正体は不明だが、ゲームをすべてクリアできた者には賞金1000万円が用意されている。
だが、開発者の正体は……。
ストーリーだけ聞いたらとても面白そうに思えるが、なんだか空回っていてそこまで面白くない。アイディア負けしてる。
他にも、他人の体に自分の脳を移植するという大手術により一命を取り留めた山本だが、新しい身体で生活していくうちに、”本当の自分”ではないという違和感を持ち始める・・・。という『NOBODY』。
『タイムマシン』タイムマシンを開発した研究者が最初に向かった行き先はとは・・・。などがある。
『NOBODY』は東野圭吾の小説に似たような設定の作品があるので、それに影響を受けたのだろうか。
本作はそれなりに楽しめるし、感動もする。ただ、『生きるススメ』、『しあわせ』と比べると、やや完成度の低い短編が集まってしまったように思う。